池田政敏展より「熱帯の魚達」

熱帯の魚達 2002年 油彩・カンヴァス・P80号 第78回白日展佳作賞 平成15年度県民文化祭秀作美術展選定作品

熱帯の魚達
2002年 油彩・カンヴァス・P80号
第78回白日展佳作賞
平成15年度県民文化祭秀作美術展選定作品

「-与論を描いた画家-池田政敏展」も会期を残すところ1週間となりました。
夏休み期間中は小中学生で賑わっていましたが
本日から2学期が始まり展示室はずいぶん寂しくなりました。

本日ご紹介する作品は「熱帯の魚達」2002年作です。
池田にとっては記念碑的作品になります。

50代半ばから公募展に出品するようになったスロースターターの池田は
鹿児島県美術展入選,名瀬市美術展覧会入賞を皮切りに白日展,日展での入選を重ね
本作品で第78回白日展佳作賞を受賞し白日会会友へ推挙されることとなりました。
また,本作品は鹿児島県民文化祭の秀作美術展に選定され県内各地で巡回展示されました。

池田の晩年の作品には,この不思議な形の「珊瑚の塔」がよく描かれています。
本作品の珊瑚の塔には与論の色鮮やかな海の生き物たちが添えられています。
どれも魚類図鑑から抜け出してきたようなリアルさですが,
池田は朝漁港へ出掛けて目ぼしい魚を譲ってもらうと先ず
変色する前に色を描きとめたそうです。
それから冷凍し,後にじっくり観察しながら形をスケッチしていったのだそうです。

南海魚と珊瑚の塔Ⅰ

南海魚と珊瑚の塔Ⅰ

池田政敏展より「杜-地と海とⅡ-」

 

杜(地と海とⅡ)2000年 油彩・カンヴァス・P100号 第76回白日展 初出品・初入選

杜(地と海とⅡ)2000年
油彩・カンヴァス・P100号
第76回白日展 初出品・初入選

愛する与論を描いて受賞した作品島の杜-クワズイモ-)
‘田中一村風’と評された池田は,独自の表現を模索していきます。

本作品は一見なんの違和感もない与論の南国らしい風景に見えますが
よく見るとアダンや雲,珊瑚が一緒に描かれています。
タイトルが「杜(地と海とⅡ)」とつけられているように
「陸地の杜」と「海の杜」そして「空の杜」が一つの画面に共存しているのです。

本来ならばこのようような風景はあり得ないのですが
与論の原風景という共通項によって違和感のない風景にまとめられています。

池田なりの世界感の表現を思考錯誤し
本作品で第76回白日展において初出品・初入選を果たしました。

BTV情報局Plusで紹介されます

ただ今開催中の「-与論を描いた画家-池田政敏展」を
BTVケーブルテレビのBTV情報局Plusで紹介していただくことになりました。
ご覧いただけるエリアの方は、ぜひご覧になってみてください。

BTV情報局Plus 
放送日:8月18日(火曜日)18:00~
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池田政敏展より「島の杜-クワズイモ-」

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島の杜-クワズイモ-
1997年作 油彩・カンヴァス・F100号
第17回名瀬市美術展奨励賞

本作品は画面いっぱいに生い茂るクワズイモの隙間から見える岬に立つ灯台と
これから水平線に沈むのでしょうか、あるいは水平線から昇ってきたのでしょうか、
輝く太陽が描かれています。

池田は本作品を描くためにクワズイモの生態を1年かけて観察,記録したそうです。
「気が付くと仕事を抜け出してクワズイモの観察にでかけていたのよ。」と奥様。
それは熱心に観察,スケッチしていたようです。
そして,1年かけて観察してきたクワズイモのは
時系列では同時に存在するはずのないつぼみと花,
それらが実になり落ちるまでを一緒に描きこんだのです。

この作品は第17回名瀬市美術展で奨励賞を受賞しました。
しかしながら講評で「田中一村風(※)の絵になりがち。影響を受けるのはいいことだが,表現はあくまでも自分のものでなければならない。」と評されました。
これを機に池田は独自の表現,世界感の追求をしていくことになるのです。

(※)昭和33年から約20年間奄美に在住しながら奄美の風景を描いた日本画家
田中一村記念美術館→

休館のお知らせ

今年も美術館前の桜の木にはセミが鈴なりになって鳴いています。
鳴くことに一生懸命で警戒心が薄れているのか,小学生に手掴みされているほどです。

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さて,当館では14日(金)~16日(日)まで休館とさせていただきます。
美術館1階のカフェ&ベーカリートワメゾンも併せて休店いたします。
17日(月)からは通常通りの開館,営業となります。
ご不便をおかけしますが,何卒ご理解いただきますようお願い致します。

池田政敏展から「トワの花-月桃-」

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トワの花-月桃- 1993年 油彩・カンヴァス F10号

この作品に描かれている月桃(げっとう)は沖縄から鹿児島まで広く分布しています。
民家の庭などにも植えられている身近な植物で与論では「サネン」といいます。
サネンの葉には爽やかな香りがあるので,モチや米を包んで蒸すと香りが移って独特の風味となります。また殺菌効果もあるので,おにぎりを包んでお弁当に持って行くこともあるそうです。近年ではアロマオイルや化粧品,ハーブティーなどにも使われているので若い世代にも馴染みのある植物ですね。

サネンは5月になると白い房状の花をつけます。

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サネンの花

花は甘い蜜を含んでいるので,与論の子供たちは花の咲くのを心待ちにして,
学校帰りにこぞって蜜を吸ったそうです。
池田も幼少時代は学校の帰りにサネンの蜜を吸うのが楽しみで,
サネンは池田にとって少年時代の思い出の花だそうです。

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自生するサネンの群生

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大きいものは大人の身長を優に超える

池田政敏展から「漁具A」

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「漁具A」1993年作
第40回記念鹿児島県美展 初出品・初入選
F60号(130㎝×97㎝)

1972年,池田は結婚を機に大阪から故郷の与論島へ戻りヒカリレストランを開業しました。
1970年代に始まった空前の与論島ブームでレストランは終日フル回転。
制作活動もままならない日々でしたが,少しずつブームも収まり
仕事の合間に趣味で水彩画など描けるようになったそうです。

そうして描いた水彩画をレストランに飾っていたところ
ある日旅行で来ていた美術関係者に「譲ってほしい」と懇願され
それが本格的に絵画制作へのめり込むきっかけとなったようです。

もっと腰を据えて作品を描けるように,と
レストランの隣にアトリエを設け油彩画にも挑戦しはじめました。

最初は3号(27㎝×22㎝),4号(33㎝×24㎝)と小さいサイズから始まり
徐々に公募展を意識し大きいサイズを試みるようになりました。
そして,55歳にして初めて公募展に出品したのが本作品で,
第40回記念鹿児島県美展に初出品・初入選の快挙となったのでした。

遠浅の珊瑚が見える海の上に与論の漁具。
中央の籠は「ティル」と呼ばれる魚を入れる竹籠です。
その前に置いてある角のある貝は「水字貝(スイジガイ)」といって水の字の形をしていることから、玄関先に掛けておくと火除けや魔除けになるといわれています。
与論では「フーガギモー」というそうです。
島の生活に寄り添う日用品を描いた池田の与論に対する愛情が伝わってきます。

与論島について

池田政敏が生まれ、愛し、描き続けた与論島とはどのような島なのでしょう。
ここで与論島について少しご紹介します。

与論島は鹿児島市から約590Km(鹿児島市から大阪市まで約600Km)の鹿児島県最南端に位置し、総面積は約21K㎡、周囲は約23.7㎞(桜島は面積約80km²、周囲約52km)と
桜島よりもずっと小さな島です。
気候は年間平均気温が23℃の亜熱帯性気候。
珊瑚礁が隆起してできた島なので、
最も標高の高いところでも97mという平坦な地形になっています。鹿-沖縄白地図小

人口は約5,800人(うち70歳以上は約23%)
島内には小学校が3校(与論小学校、茶花小学校、那間小学校)
中学校が1校(与論中学校)、高校が1校(鹿児島県立与論高校)あります。

主な産業は農業と観光業になります。
農業はサトウキビ栽培、畜産が主で、他にさといも、いんげん、飼料作物などが生産されています。

観光は島の東側(大金久海岸)沖に大潮の干潮時に姿を現す百合ヶ浜が有名で、
毎年3月にはヨロンマラソンが開催されています。
1972年(昭和47年)に沖縄が本土復帰をするまでは日本最南端の島として空前の与論島ブームで、茶花(島内のメインストリート)は肩がぶつかり合うほど混み合っていたそうです。
大金久(大金久海岸)
また与論島は、天気の良い日は与論城跡から沖縄本島が望めるほど近く(直線距離で23Km) 琉球文化の影響も大きく受けています。旧暦3月・8月・10月の15日に行われる「与論十五夜踊り」は与論、琉球、大和の文化が融合された踊りとして平成5年国指定重要無形民俗文化財に指定されています。

与論島へは鹿児島空港から飛行機が1日1往復、船も鹿児島新港から毎日出ています。
池田政敏の作品を目の前にすると、描がれた世界へ訪れてみたくなりますよ。
宇勝(宇勝海岸)

「若き薩摩藩士たちの足跡をたどる」バスツアーご案内

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薩摩金山蔵私学校よりバスツアーのご案内をいただきました。

薩摩藩英国留学生が派遣されてから150年を記念して
鹿児島から、イギリスへと旅立った串木野の羽島までの道のりを辿るツアーです。
中でも最年少の留学生として英国に渡り、後にカリフォルニアのワイン王となった「長澤鼎」に焦点をあてお話いただくそうです。
詳しくは薩摩金山蔵私学校事務局(0996-21-2110)へお問い合わせください。

また、鹿児島歴史資料センター黎明館では7月26日(日)まで
薩摩藩英国留学生渡航150年記念企画展
「幕末薩摩の留学生ー日本近代化の若き先駆者たち-」
が開催されていますので、そちらをご覧になってから参加されてみてはいかがでしょうか。

池田政敏展から「シュロとブーゲンビリア」

シュロとブーゲンビリア50-100
「シュロとブーゲンビリア」
(1998年頃 油彩・カンバス)

「-与論を描いた画家-池田政敏展」のポスターにも使われている本作品は
150号(縦1m80cm×横2m30cm)という本展で一番大きな作品です。

この作品を描くために池田は1年半もの間シュロを観察し
完成まで1年8ヶ月かけたそうです。
最初はブーゲンビリアとシュロだけでしたが
オオゴマダラが大群で越冬している場所を偶然見つけ,
嬉々として帰宅すると画面にオオゴマダラを描き加えたのだそうです。

画面左側に群生している白い花がブーゲンビリア,
全体を覆っている扇状で先端が裂けて垂れ下っている葉がシュロ,
中央をひらひらと舞っているのがオオゴマダラです。

シュロの葉が茂る中央にブーゲンビリアとシュロの花があしらわれ
濃い緑の中に咲く花をかすかに照らす陽射しによって
この作品の前に立つと深いシュロの森へと吸い込まれてしまいそうになります。

ちなみにこの作品に描かれている「シュロ」とは「ビロウ」のことで
与論ではビロウもシュロも「シュロ」とよんでいるようです。
与論の言葉では「フバ」といい、
このフバは葉が丈夫なため大変有用な木で
カゴ(フバ籠)やカサ(フバ笠)などの材料となり,生活に欠かせない木でした。
33回忌法要では葉で扇を作って供える習わしがあります。
フバの扇を仰いで天に向かうのだそうです。