「夏季九華」展ギャラリートーク

8月2日に開催されたギャラリートークには、当日ご都合のついた7名の作家さんが作品解説をしてくださいました。

トップバッターは米倉秀太郎(ひでたろう)先生。作品は油絵具とアクリル絵具のミクスメディア。それぞれの表現領域や特性についてお話くださいました。油絵具は光を複雑に反射し、アクリル絵具よりも透明感が出せるそうです。



秀太郎先生のお兄様にあたる米倉秀紀(ひでき)先生の作品は、「アキーラ」という絵具と油絵具のミクスメディア。このアキーラという絵具は油絵の具との相性がとても良く、乾いた感じを出せる絵具なのだそうです。
モチーフや画風で寂しさを描いていると思われがちですが、特定の感情を設定しているのではなく、自身が惹かれる人物像と、そのみずみずしさや存在感を描いているそうです。



本展では最年長(92歳)の御大、児浦純大(すみなが)先生が手に持っているのはマイクではなく「ペインティングナイフ」。愛用しているペインティングナイフを手にすると落ち着くので、いつも持ち歩いていらっしゃるそうです。
「ナイフだから、職質されるとまずいんだよなぁ」と冗談も飛び出しました。


出品されている「変形型水墨画」(児浦先生命名)は、30年ほど前から毎日のようにスケッチしている自身の心象風景をペインティングナイフを使ってネオカラー(水彩絵具)で表現したシリーズです。
作品にはそれぞれタイトルがついていますが、どれも心象風景なので、何に見えるかは鑑賞者に委ねたい、とこのこと。皆さんはどのような印象を受けたのでしょうか。

旅行がお好きな日本画家の西村康博先生は、訪れた旅先の思い出を記録するように作品に描いているそうです。フランスのモンサンミッシェルを描いた作品には金箔が貼られていますが、金箔一枚のお値段を聞いて、会場の皆さんもビックリ!さらに使用している枚数を聞いてさらにビックリ!表現の追求も大変なご時世です。

米倉秀一先生(油絵)は本展開催の立役者でもありますので、作品解説の前に、開催までのいきさつや、先生方との思い出話しをしてくださいました。
日常風景に身近な人物(家族)を落とし込むことで、人生のある瞬間を記憶としてとどめるよう作品を描いていらっしゃるそうです。
また、半世紀ちかく薩摩焼を蒐集されていて、今回は特別に西餠田系元立院窯の黒釉筒花生シリーズを焼物展示室に展示させていただいています。
ぜひ併せてご覧下さい。


書家の永野青邑(せいゆう)先生は、「書」は日本、中国、韓国にあるが、日本は「書道」で国語の授業で習う、中国は「書法」といい古典として習う、韓国は「書芸」といい美術の授業で習うことを教えてくださいました。


さらに、作品制作で使用している筆や硯など貴重な道具をお持ちくださり、来館者が実際に手に取ることができるという、大変貴重な体験をさせてくださいました!


ギャラリートークのとりを務めてくださったのは、本展で唯一の立体作品を出品くださった彫刻家の福元修一先生です。
「石」という無機質な材料で「崖」のような無機質なモチーフを作るより、有機的なモチーフ「花」や「人物」など作品にする方が難しいとのこと。無機質な石材を用いて有機的な対象をかたちづくる行為は、素材と生命のあいだに横たわる隔たりを作家自身の感覚によって橋渡しする試みでもあり、最終的にいろんなものがそぎ落とされ、純粋に自分自身の痕跡が作品に定着する感覚なのだそうです。

ギャラリートーク終了後は、作家さん、来館者の皆さんでそれぞれの作品について話が尽きず、閉館時間まで賑やかな一日でした。

夏季九華展 ギャラリートーク【8/2(日)14時~】

「夏季九華ー夏のわくわく散歩道」展の出品作家さん自らが作品解説を行う、ギャラリートークを開催いたします。
作品に込めた思いについて、また制作方法について直接お話を伺えるチャンスですので、ぜひご参加ください。

日 時:8月2日(日曜日)午後2時~3時
講 師:児浦純大、永野青邑、西村康博、福元修一
    米倉秀一、米倉秀紀、米倉秀太郎
    ※7月31日現在
参加費:入館料(一般500円、障害者手帳保持者100円)のみ
予 約:不要

オンライン展覧会を公開しました

「没後40年 中間冊夫展 ヒューマニズムの軌跡」(2025年12月~2026年3月開催)のオンライン展覧会ページを、「ジャパンサーチ」(https://jpsearch.go.jp/)にて公開しました。
下のバナーよりご覧いただけます。

中間冊夫の奥深い魅力とその変化について、多くの方に知っていただければ幸いです。

なお、ジャパンサーチでは当館収蔵品データベース(現在264点掲載)も掲載しておりますので、よろしければ併せてご覧ください。

「没後40年 中間冊夫展 ヒューマニズムの軌跡」コラム⑤

「没後40年 中間冊夫展 ヒューマニズムの軌跡」は本日最終日です。
ご関心のある方、また見納めをしたいとう方のお越しを是非お待ちしております。

さて、今回は中間の画風の変遷に関するコラムです。

「二つの顔」
油彩・キャンバス 1959年
第27回独立展 

中間冊夫は生涯を通じて具象画を描きましたが、「歩く人」を描いた
1950年代後半から1960年代前半にかけては具象画と抽象画の間で模索を行っていました。

当時国内外で抽象美術が注目を集めており、中間自身も
「自分ではどんどん変わって抽象性が強く出て来そうです。
だが具象としてのフォルムというものに魅力をもっているんです。
それをどういうふうに画面にして行くかと自分で求めてゆくことが私の課題です。」※と述べています。

この時期は、人体から連想したイメージを抽象化して表現していました。
「二つの顔」は、どこが顔の部分なのか判然としませんが、
黄色に輝く分厚いマチエールの中心に鎮座する“顔”が強い存在感を放っています。

※…『武蔵野美術』「アトリエ閑談」№25、武蔵野美術大学出版編集室、1957年10月

「没後40年 中間冊夫展 ヒューマニズムの軌跡」コラム④

【風景画にもご注目】
中間冊夫「道」
1983年 第51回独立展
※正面ホールにて常設展示しています

人物をモチーフとした作品の印象が強い作家ですが、晩年は沖縄の風景を題材とした作品を描いています。

1982年、中間は前畑省三、荒木絢子(ともに独立美術協会会員)らと沖縄へスケッチ旅行に出かけ、世界遺産として知られる今帰仁(なきじん)城跡や石垣島等を訪れました。
本作では、バス通りから今帰仁城跡へ歩いてむかう道が描かれています。画面右下から延びる道ははるか遠くへと続き、その上方には赤々と燃える夕日が見えます。

道の脇には実風景には見られない亀甲墓が描かれ、また仏教の教えの中でしばしば極楽浄土のイメージと結びつけられる、夕日の浮かぶ空が画面の大半を占めるなど、この世とあの世のイメージが交差する作品となっています。

中間が晩年関心を寄せていた哲学的なテーマと、沖縄独特の風景がみごとに融合した作品です。

「没後40年 中間冊夫展 ヒューマニズムの軌跡」コラム③

【山が好き!】

山の春の美しさを「人間の一生を左右するくらい」見事だと語り
(中間冊夫「八ケ岳山麓の湯」(『温泉』・第19巻第4号・1951年)、
八ヶ岳や大山など各地の山々をスケッチしていた中間。
桜島、高千穂峰と県内各地の山も描いていますが、晩年のお気に入りは開聞岳でした。

旧制川辺中学校(現:川辺高校)時代、週に1回寄宿舎から自宅に帰る道中に小さく見えていた開聞岳は、思い出の山ではありましたが、長らく山の近くに行く機会がなかったそうです。

70歳を過ぎた頃の初春、開聞町のそうめん流しに出かけたところ、菜の花畑の向こうに姿を現した開聞岳にいたく感銘を受け、以来帰郷のたびにスケッチに出かけるようになりました。

ちなみに、桜島もモチーフとしての面白さを認めているものの、前景に建物が入らない点で開聞岳がより好きだと語っています。(南日本新聞1982年7月15日朝刊)
また、桜島を描いた油彩画を加世田市(現・南さつま市)に寄贈しており、当館所蔵のスケッチ(2枚目画像)はその下書きであると思われます。

前期展示(※終了しました)では桜島、後期展示では開聞岳のスケッチを展示しています。
皆さんはどちらの山が好きですか?

「没後40年 中間冊夫展 ヒューマニズムの軌跡」コラム②

「うづくまる」
1973年 油彩・キャンバス

1970年代から晩年にかけて、中間は座る、あるいは横たわるポーズの人物をモチーフとした「うづくまる」というタイトルの作品を毎年のように描くようになります。
本作品は縦53.0㎝・横45.5㎝とわりあい小さいサイズでありがら、伏目かちにこちらをみつめるモデルの、やや緊張気味な様子やナイーブな内面を慎重な筆致で描き出した、シリーズの中でも光るものをもつ作品です。

「没後40年 中間冊夫展 ヒューマニズムの軌跡」コラム①

企画展「没後40年 中間冊夫展 ヒューマニズムの軌跡」をよりお楽しみいただくために、現在インスタグラムおよびフェイスブックにて、中間冊夫に関する情報を発信しています。
本日より、「美術館だより」でもご紹介いたします。

第1回でご紹介しますのは、代表作「歩く人」です。

「歩く人」/ 中間冊夫
1957年 油彩・キャンバス

風を切ってやや前のめりに歩みを進める人物が、鮮やかな色彩と力強い筆致によって描かれています。
武蔵野美術大学の講師に就任した直後に制作された作品です。

このころ、中間の画風は抽象と具象のあいだで模索段階にあったいいます。
従来は人物を落ち着いた色彩と大らかな筆致によって、どちらかというと写実的に描いていましたが、1950年代半ばから背景に絵具を厚く盛り上げた線の重なりが現れるようになり、また人物描写の単純化が進みました。

本作品の人物もシルエット以外の描写はなく至って単純化されていますが、溶岩が湧き上がるように厚く盛られた人物部分のマチエールから人物の意気揚々とした様子が伝わってきます。
また、背景の原色の線の重なりからは、未来に期待する思いが伝わってくるようです。

新たな制作スタイルを確立しようとする中間自身の姿と重なるものを感じさせる作品です。

椋鳩十作品コーナー設けました

「ハトの日かごしま」の期間(8月31日まで)、
当館2階の休憩エリアで椋鳩十作品の絵本を中心にご用意しています。

椋鳩十の絵本と言えば梶山俊夫・画のシリーズですよね。
椋鳩十が紡ぐことばの世界観を独特のタッチで見事に表現しているだけでなく、読み手の想像力をぐんとかき立て広げてくれます。

「におい山脈」は人間社会のゴミ問題について動物の目線で書かれた絵本ですが、1972年時点で今でいうSDGs(持続可能な開発目標)に着目し、問題提起をされていました。

他にも、クスッと笑ってしまう絵本や、ちょっと心が切なくなる絵本などありますので、ぜひお手にとってゆっくりとご覧になってください。

「ハトの日かごしま」グッズができました

「ハトの日かごしま」のグッズができました!

文筆家で椋鳩十のお孫さんでもある
久保田里花さんによる副読本『MukuMOOK』

「ハトの日かごしま」のポスターを制作されたイラストレーター大寺聡さんデザインのポストカード、缶バッジです。

本日より当館のミュージアムショップでも販売していますので
気になる方はぜひチェックしてみてください!

◇ MukuMOOK ¥500
◇ ポストカード(3枚組)¥500
◇ 缶バッジ(4種類) 1個¥300