庭の花々に魅せられて~四季の使者展作品紹介①~

平年と比べて12日遅れで梅雨が到来しました。
当館すぐ近くの慈眼寺公園のアジサイも見ごろを迎えています。

当館展示室でも、アジサイが見ごろを迎えています。

〈花(アジサイ)1954年頃 矢澤一翠〉

 矢澤 一翠(やざわ いっすい)は、徳之島に生まれ、県内高校や鹿児島短期大学で後進の育成に尽力するとともに、鹿児島創元会を創設するなど鹿児島の美術界に多大なる貢献を果たしました(当館収蔵作品はコチラ)。主に漁港や人物、台湾の風景を描いた一方、ポピーやアネモネ、パンジーなど自宅の庭先の花を描いた作品も数多く残しています。

 庭先のアジサイを花瓶に活けて描いたのでしょうか。今が盛りとばかりに咲き誇るアジサイの花房が画面左隅に、枯れかけた花房が中央に描かれた、大胆な構図となっています。
 左隅の花房では花びら一枚一枚が油絵具で厚く立体的に描かれ、瑞々しさを感じさせるのに対し、中央の花房の花びらは縮れて茶色に変色しつつある様子が細かく描き込まれており、命あるものの輝きと儚さが一枚の絵で表現されています。花びらや葉脈の力強い表現・大胆な構図・対比の効いた色遣いにより、実際の大きさ以上の存在感を放つ作品です。
 矢澤はアジサイを描いた作品(本作とは別作品)により第9回南日本美術展(1954年)で最高賞の知事賞を受賞していており、アジサイは思い入れのある花の一つであったと思われます。

 アジサイのほか、薔薇やアネモネ、パンジー、くちなし、タデ、肥後椿と様々な花々を描いた作品を7月10日(日)まで展示しています。ぜひご覧ください。

所蔵品展 展示作品のご案内

所蔵品展「四季の使者―画家をとらえた草花たち―」および「花に彩られたやきもの」、海老原喜之助コーナーにて下記の作品を展示中です。

※海老原喜之助「雪景」「男の顔」「スケート」は、現在展示しておりません。

小企画展「こどもへの眼差し」

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
本年がみなさまにとってより善き年でありますようお祈りいたします。

さて、現在開催中の企画展のご案内です。

展示作家:上橋薫、海老原喜之助、小田和典、大津英敏、芝田米三、中間冊夫、

     森長武雄、森芳雄、矢澤一翠、山田文子(敬称略)

期間:2021年1月7日(木)〜3月23日(火)
休館日:毎週水曜日

「こども」にまつわる絵画・陶芸作品を、所蔵作品からピックアップした企画展です。
同じ題材でも、作家の個性によってこどもは様々な表情や雰囲気をみせています。
日常に垣間見える小さな幸せを、こどもの姿を通して感じてください。

没後20年矢澤一翠展

7月5日(日)をもって終了いたしました。
矢澤一翠(やざわいっすい)は、教員として後進の育成に尽力する一方、鹿児島創元会を創設するなど、鹿児島の美術界にも大きな貢献を果たしました。
矢澤の作品は、当人の人柄を表すかのような多彩で優しい色使いが印象的です。
ライフワークとしていた「漁港シリーズ」「台湾シリーズ」をはじめ、染色家というもう一つの顔が垣間見られる「人物シリーズ」(人物が着用している服、着物の柄は矢澤のオリジナルデザイン)も見どころです。
本年は矢澤の没後20年にあたることから、当館所蔵の矢澤作品を一堂に展示しています。

矢澤一翠略歴
1911年徳之島に生まれる
東京高等師範学校(現筑波大学)卒業後、日本統治下の台湾の嘉儀女学校で教鞭をとり
帰郷後は鹿児島女子高等学校、鹿児島短期大学で美術の指導にあたる。
第9回南日本美術展で最高賞の知事賞を受賞。
県美展、創元展、日展でも入選、入賞を重ねる。
1987年鹿児島創元会を創設。
1985年鹿児島短期大学を退職し、神奈川県茅ケ崎市へ転居。
2000年9月18日逝去。

南日本美術展:奨励賞、知事賞(最高賞)、鹿児島市教育委員会賞(染色)
創元会名誉会員、鹿児島県美術協会初代会長
名瀬市(現奄美市)文化功労者
ほか