十二代沈壽官作品


左:錦手憩う翁 右:錦手釣鐘と弁慶像

これは、日置市東市来町美山にある壽官窯の十二代沈壽官の作品です。
椋鳩十が「薩摩伝統工人伝」で苗代川(現美山)の白薩摩の名工として紹介しています。

薩摩焼では、このようなフィギアを「捻りもの(ひねりもの)」といいます。
十二代沈壽官というと、陶器の全面に透かし彫りを施す技術を確率し、中でも二重透かし彫りが有名ですが、捻りものも大変得意とし、名品が多く残っています。

写真の作品は、左の「錦手憩う翁」は高さ12cm、右の「錦手釣鐘と弁慶像」は高さ17cmと小振りです。しかし、よく見ると二体とも表情は大変豊かで、翁はすっかり酔っ払っているのでしょうか、目が垂れ下がっています。細部の細工もぬかりがなく、翁の足元にあるキセルの火入れの中には、赤く燃えた炭がちゃんと入っているんです。
弁慶の鎧の絵付けも繊細で、右手で掴んでいる綱は陶器とは思えないリアルさです。

これらの職人技や伝統を継承している現在の沈壽官窯から、当代(15代)沈壽官氏に壽官窯、薩摩焼についてお話いただきます。
日時は2月17日(土曜日)午後2時からです。ぜひ足をお運びください。

第3回ギャラリートーク:有山禮石氏(指宿長太郎焼窯元)

三宅美術館では開館30周年記念企画展「椋鳩十と薩摩伝統工人たち」展の一環として,指宿長太郎焼窯元から有山禮石氏をお迎えし,ギャラリートークを行いました。
禮石氏は,「薩摩伝統工人伝」に「一代にして彗星のごとく現れた」と評された初代長太郎の孫にあたります。

お話は,祖父にあたる初代長太郎の人となり,椋鳩十とのつながりなど,親族ならではの思い出からはじまり,その伝統をひきついだ禮石氏が,陶工として持ち続けている志まで,多岐にわたりました。
中でも,禮石氏が独自にあみだした「氷裂紋釉」について,自身が北海道に旅行した際に目にした北国の美しい風景を表現したものだと紹介し,その開発秘話に,多くの質問が寄せられました。
なお現在当館では,禮石氏による2012年作の「春近し」という作品で,その氷裂文釉をご覧いただくことができます。

次回2/17(土)は,午後2時から,沈壽官窯より15代沈壽官氏をお迎えしてギャラリートークを行います(1/20より延期となっていた回です)。
多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

【ギャラリートーク】
日 時:2月17日(土)午後2時から
会 場:三宅美術館1階展示室
参加費:無料(入館料のみ)
予 約:不要

現在の長太郎焼

「椋鳩十と薩摩伝統工人たち」展では、
「薩摩伝統工人伝」に紹介されている工人の技術や伝統を継承している現代の工人も併せて
紹介しています。
昨日ご紹介した西郷隆盛の陶像の作家である二代長太郎雅夫は初代長太郎の継承者であり、
現在は初代の孫にあたる3人の陶工たちによって、それぞれの窯で継承されています。

有山長佑氏による本窯長太郎焼窯元(下福元町)

有山明宏氏による如意山清泉寺長太郎焼窯元(下福元町 清泉寺跡)

そして有山禮石氏による指宿長太郎焼窯元(指宿市東方)です。

明日、2月11日(日曜日)は禮石氏よるギャラリートークを開催いたします。
気軽にご質問などもしてただけますので、ぜひこの機会に足をお運びください。

【ギャラリートーク】
日 時:2月11日(日曜日)午後2時から
会 場:三宅美術館1階展示室
参加費:無料(入館料のみ)
予 約:不要

 

この一品:西郷隆盛像

こちらは、長太郎焼の西郷隆盛像です。
陶器でできた陶像で、画像では分かりづらいですが、高さは105cmと幼児ほどの大きさです。

(長太郎窯二代長太郎雅夫作、鹿児島市立喜入小学校蔵、
「皇紀二千六百年/二代長太郎雅夫作/歳四十壱」銘)

本作品については、2月8日付けの朝日新聞「この一品」で紹介させていただきました。

画像:朝日新聞 平成30年2月8日付 第2鹿児島面 「この一品」
掲載承諾書番号:18-0093 (本記事は朝日新聞社に無断で転載することはできません)

城山の西郷隆盛像と一見似ていますが、城山の方は左足を前に、こちらは右足を前に出しています。また、後ろ姿など、よく観察すると細部は異なる箇所が多くあります。

ちなみに、城山の西郷隆盛像の作者である彫刻家 安藤照の誕生の地は
現在「西郷どん大河ドラマ館」のあるところです。

旧長太郎焼本窯風景

「椋鳩十と薩摩伝統工人たち」展では、工人の作品以外に、工人にまつわる資料も展示しています。
その一つが旧長太郎焼本窯の風景画です。
土岐浩藏の油彩画で、昭和33年頃の風景と思われます。

旧長太郎焼本窯は、永田川河口沿い(現在の谷山中央2丁目)にありました。
鹿児島情報高等学校の並び、というとイメージしやすいでしょうか。
今はマンションが建っており、入口には記念碑が建っています→


この写真は、風景画を描いたと思われる「しおや橋」から、同じ画角で写したものです。
中央の大きなマンションが長太郎焼本窯があった場所になります。
当時は長太郎窯から先は錦江湾でしたが、昭和42年から埋め立てが始まり、
今では海岸線は遥か彼方へ行ってしまいました。
しおや橋は人道橋で車は通ることはできない生活橋ですので、お散歩がてら昔の長太郎窯を想像しながら渡ってみてください。

【指宿長太郎焼窯元 有山禮石氏ギャラリートーク】
日時:2月11日(日曜日)午後2時から
会場:三宅美術館1階展示室
予約:不要
参加費:入館料のみ

三代長太郎流石のレリーフ

前回は初代長太郎の鹿児島市役所本庁のレリーフをご紹介しました。
本日は初代長太郎の息子で三代長太郎流石(さすが)氏のレリーフをご紹介します。

これは、鹿児島市天文館のアーケード(ぴらもーる)内にある手芸店の正面入口です。
ちょっと画像が不明瞭なので恐縮ですが、長太郎焼の黒釉を背景に沢山の鶴が舞っています。
1500枚を超える長太郎焼のタイルによるモザイク調のレリーフで、実物はかなり迫力があります。
大きさは建物の2階から3階にかけて設置されているので縦5~6mはあるでしょうか。
当時、この大きさのレリーフ制作を請け負ってくれる陶工がなかなか見つからず、
引き受けてくれたのは流石氏しかいなかったとか。
今度ぴらもーるにお出かけになる際は、ぜひ上に目線を向けてみてくださいね。

2月11日(日曜日)は、このレリーフの制作者流石氏の息子で指宿長太郎焼窯元の有山禮石氏によるギャラリートークを開催いたします。

【ギャラリートーク詳細】
日時:2月11日(日曜日)午後2時から
会場:三宅美術館1階展示室
予約:不要
参加費:入館料のみ

 

初代長太郎のレリーフ

「椋鳩十と薩摩伝統工人たち」では「薩摩伝統工人伝」に紹介されている工人12名の作品や資料を展示しています。
その中で椋鳩十に「日本の陶芸家の中にあっても、光芒をはなつ存在であった」と評されているのが初代長太郎です。
本展では初代長太郎の「羅漢坐像」を展示していますが、私たちの身近なところでも初代長太郎の作品を見ることができます。

これは鹿児島市役所本庁舎の本館です。

本館の正面玄関に丸いレリーフがあるのにお気付きでしょうか。

このレリーフの作家が初代長太郎です。

このレリーフの制作にあたっては大変なご苦労があったようです。

2月11日(日曜日)には、初代長太郎の孫で指宿長太郎焼窯元の有山禮石氏によるギャラリートークを開催いたします。
長太郎焼についてお話いただきますので、ぜひ足をお運びください。

【ギャラリートーク詳細】
日時:2月11日(日曜日)午後2時から
会場:三宅美術館1階展示室
予約:不要
参加費:入館料のみ

この一品:ミニ屏風

「薩摩伝統工人伝」で『鹿児島では押しも押されない表具師』と紹介されている田代常吉の孫にあたり、田代表具店三代目の田代和雄氏による、掛け軸の「裏打ち」と「切り継ぎ」の実演
を開催いたしましたが、(詳細はこちら)、その田代和雄氏が経師(屏風や襖を表装する職人、作家)として制作したミニ屏風をご紹介させていただきました。

画像:朝日新聞 平成30年2月1日付 第2鹿児島面 「この一品」
掲載承諾書番号:18-0093 (本記事は朝日新聞社に無断で転載することはできません)

「ミニ屏風」は企画展第2展示室で展示中です。ぜひ実物の「裂」をご覧になってみてください。

龍門司焼陶工の墓


先日、龍門司焼次郎太窯の川原輝夫氏にギャラリートークで龍門司焼の歴史についてもお話いただきました。
その中で、龍門司焼の陶祖といわれる山元碗右衛門という陶工の名前が出てきました。
山元碗右衛門は鹿児島城下で瓦を焼いていましたが、加治木島津家に招かれ、現在の安国寺あたりに山元窯を開きます。そこでは御用窯として、白土で高級な皿や碗などを焼いていたそうです。
その後、小山田に良質の土が見つかり、享保3年(1718)頃に龍門司焼古窯(鹿児島県指定史跡)に窯を移します。初めは白土を使っていたようですが、地元の赤土に化粧土を掛ける現在の龍門司焼の様式となり、日用品を焼き現在に至ります。

その山元碗右衛門はじめ、龍門司焼の陶工たちの墓が扶蔵院墓地にあります。


左が山元碗右衛門の墓 真ん中は妻の墓

龍門司焼の名工 芳工や、「椋鳩十と薩摩伝統工人たち」で紹介している芳次や芳光の墓もあります。

芳工の墓(五輪塔)

場所は陶夢ランドの前になりますので、龍門司焼を見に行かれる際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

ギャラリートーク:龍門司焼次郎太窯 川原輝夫氏

本日、龍門司焼次郎太窯の川原輝夫氏に龍門司焼、次郎太窯についてお話いただきました。
川原氏は、「薩摩伝統工人伝」に紹介されている龍門司焼の陶工「芳次(ほうじ)」の孫にあたります。

まずは、展示中の芳次(次郎太)と芳光(源助)の作品を見ながら芳次や芳光について。
それから、龍門司焼の時代背景や、明治の陶工の話。そして、龍門司焼の土の特徴や採取の場所、調合など専門的な内容まで、普段は聞くことのできない内容をお話いただきました。
また、多彩な釉薬を持つことで有名な龍門司焼。
龍門司焼は、今も土と釉薬の原料は全て地元で採取、調達しているそうです。
本日はその中から12種類の釉薬見本を持ってきてくださいました。

こうして並べて比較していくと、その種類と技法の多彩さに驚くとともに、
先人から連綿と続く研究と努力に改めて頭が下がる思いです。

今回見本で紹介してただいた釉薬は
白流し、玉流し、青流し、ふり掛け流し、龍門司三彩、飛びかんな、象嵌三島手、飴釉、龍門司黄釉、鮫肌、観音、芳工赤、の12種類でした。
「椋鳩十と薩摩伝統工人たち」展では、このうち「玉流し」(芳次)、「龍門司三彩」(軍次)、「芳工赤」(芳光)、「象嵌三島手」(芳光)を展示しています。
それ以外に大変珍しい「どんこ釉」(軍次)と「白蛇蝎」(輝夫)も展示していますので、
様々な表情をもつ龍門司焼をぜひご覧下さい。