三宅美術館公式Instagramアカウントを開設しました。
今後は美術館だよりに加え、インスタグラムでも当館の最新情報をお届けします。
ぜひフォロー&いいね、よろしくお願いいたします。
ユーザーネーム:@miyake_museum_of_art
URL:https://www.instagram.com/miyake_museum_of_art/
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当館から歩いて10分ほどのところにある鹿児島情報高校の生徒さんたちが
授業の一環で来館されました。
当館の成り立ちや主な収蔵品をご紹介したあと、現在開催中の特別企画展
「没後40年 寺尾作次郎美学の系譜」展を学芸員2名の解説で見学していただきました。
また、通常は展示している作品は「見る」ことしかできませんが、
壁面に掛かっている油絵の裏、中を見たり、実際に作品が描かれているキャンバスを触ったり、油絵の具の匂いを嗅いだり、また、特徴的な釉薬を施した焼物を触ったり持ったりして、想像していた感触との違いを実感していただきました。
今後生徒さんがちが個人的に興味のある美術館に足を運び、展示されている作品を少しでも身近に感じていただければ嬉しいですね。
「貢戸棚」昭和9年(東京時代)
長さ九尺(約2m70cm) 奥行三尺(約90cm)
本作品は昭和9年、毎日新聞社の記者で俳人の小野賢一郎氏の依頼により
東伏見伯爵家へご成婚祝の献上品として制作された書棚です。
表扉から横、背面まで革張り細工が施され、琉球王府の江戸上りがモチーフとなっています。下絵が彫られた版木に革を打ち付けて図柄を浮き上がらせ、その上に金箔を敷いてから彩色がされているそうです。これは、経年とともに渋い味わいが出ることが計算された手法です。
革細工に使用された版木とその下絵はすべて残っていますが、本展では表扉の4枚を展示しています。
「窯変鳥葡萄文扁壺」昭和34年 鹿児島工業試験場時代「武町鹿窯」銘
この作品は原良町にあった工業試験場が武町に移転した年に製作されました。寺尾はこの年に定年退職していますので、工業試験場時代の最晩年の作品になります。
作品名にあるように、正面に鳥、横に葡萄の貼付文(本体とは別に作って置いた飾りを粘土で貼付ける技法)が施されています。
その上から数種類の釉薬を掛け分けていて、窯変(窯で焼成中に起こる変化)による景色も味わい深い作品です。
本作品は「扁壺」といって、上から見ると楕円になっています。(横から見ると正面より薄い)
寺尾は、河井寛次郎のもとに二年ほど入門していますが、扁壺は河井寛次郎も好んで製作していました。
さて、実は、本作品の特徴は底の部分にあるのです。
この作品、高さ50cm、幅40cmの大きな壺で、重量は一度置いたらなかなか動かすことは無い重さです。しかし、寺尾はその底部に美しい陽刻(模様を浮かび上がらせるように彫ること)の花文様と白い釉薬を施しているのです。
寺尾作次郎の作品には、まず人目に触れることはないであろう箇所にも趣向を凝らしたものが、いくつもあります。展示している絵皿なども、裏に素敵な絵付けをされているものが多く、全てお見せできないのが残念です。
「染付陶家文水指」紫原鹿窯(昭和43年~59年)
こちらは染付(呉須とよばれる藍色の釉薬で文様を施したもの)で
陶家(陶芸家、焼物の窯の様子)を描いた水指になります。
この絵付けは、面相筆(めんそうふで)という日本画で人物の目鼻立ち(面相)を描くときに使われる大変細い筆で緻密に描かれています。
寺尾作次郎は18歳で画家の和田三造に入門し、日本画、図案などを学んだので、面相筆使いはお手のものだったようです。
寺尾が昭和4年~14年まで図案家として務めていた松坂屋の松坂屋史料室には、昭和13年に模写した「源氏千載ひながた」の下巻が残されていますが、
その筆致も大変精密で、寺尾の画力に驚かされます。
展示室にはスケッチブックも展示していますので、寺尾の画家としての一面もお楽しみ下さい。
「貼付獅子文革壺」昭和12~14年
こちらの作品は、作品名のとおり革製の壺になります。
地肌が一見すると木目のように見えるので木製の壺に見えますが
水牛の革を叩き上げて壺を成形した作品です。
浮き出ている装飾文は文様を彫った版木に(凹)に
革を叩き付けて浮き上がらせ(凸)膠で貼付けてあります。
寺尾作次郎の京都時代の作品です。
そしてこちらは、「彩色蓋付革壺」昭和11年以前 です。
同じく革製の壺ですが、寺尾作次郎の東京時代の作品で
蓋付きの壺になります。
製法は貼付獅子文革壺と同じですが、こちらは全体に胡粉を塗り
その上に絵付けをしています。
併せて図案も展示していますので、壺の図柄と見比べてみて下さい。