「スケート」の謎

夏休みに入り、中学生が美術の宿題のために来館してくれます。
まだまだ休みも中盤だというのに、
この時期にもう美術の宿題を済ませるとは
なんと計画性のある中学生たちなんでしょう。

おおかたの中学生は8月30日前後集中するので
小さな当館は大騒ぎになってしまいます。

そんな彼らから、作家や作品について質問を受けることもしばしばです。
答えに窮する難しい質問から、微笑ましい質問まで様々です。

そして、この海老原喜之助の作品で子供たちから多い質問は、
ポスターに使用している「スケート」(1930年作)についてです。

この作品は海老原喜之助がパリ時代に描いたもので、
青と白で描かれた画風はエビハラ・ブルーと呼ばれています。
60号(縦130×横97)の比較的大きな作品です。

そして、子供たちからの質問は、というと…

「この絵には何人の人が描かれているんですか?」

「 … 」

どうも、描かれている人数って子供達にはツボらしく、
競って数えて、こちらに正解を求めてきます。

スケートリンク(池)のまわりだけじゃなく、
森の中や森の向こうにも人物は描かれていて、数えた事なんかないんですよね。

誰か正確に数えてくれないかなぁ。

絵の衣替え

展示中の「赤い桜島」「青い桜島」(前畑省三 作)の衣替え(額装交換)のため
額装職人の中徳氏に新しく額縁を作って頂きました。

実は、今まで入っていた額装は‘仮縁’といって
取りあえず入れておく簡易的な額縁でした。

最近では額装に入れないことを前提とした作品や
あえてキャンバスを壁に直に掛ける展示方法がとられたりしています。
作品の雰囲気を壊さないし、軽いし、経費も抑えられ、それなりの利点も多いのですが
当館では全作品 額に入れています。

それは、額装することで作品保護になるからです。
外気に直接触れることからの保護、紫外線からの保護、
観覧者からの保護(間違って作品にぶつかったり、作品に向かってくしゃみなどを
してしまった場合、直接作品に害が及ばないように)
経年による歪み等からの保護、等々です。

しかし、この額縁が自己主張しすぎて作品の雰囲気に影響してしまっては本末転倒。
あくまでも縁の下の力持ちでなくてはなりません。

そのさじ加減を上手に図って、作品に見合った
あるいは作品をより引き立てる額を作って下さるのが〔空間装飾〕の中徳氏です。

例えば、今展示している「地層 合」(前畑省三 作)はシラス地層を描いた作品です。

この作品の額装は一見何の変哲もない黒いシンプルが額装ですが
よーく見ると作品との間に隙間があり、作品が少し浮き出て見えます。

まさに地層剥ぎ取り標本のようです!

抽象的に地層を描いた作品を地層剥ぎ取り標本のごとく額装することで、
見る側にそのテーマが明確に伝わってきます。

芸術の秋、県内でも様々な企画展が開催されています。
作品鑑賞の際、額装にもちょっと目を向けてみてはいかがでしょう?
中には作家が自分で作った額装もあるんですよ。

 

最後の巡回地

一昨年パリに始まり、昨年から日本を巡回している薩摩焼展。
地元鹿児島での展示は25日で終了し、
次は最後の巡回地、東京です。
会場は江戸東京博物館。

当館の収蔵品も出展されておりますので、上京の際お時間がありましたら
ぜひお立ち寄りください。
江戸東京博物館の常設展もとても面白く楽しいですよ!