坂田燦の「おくのほそ道」版画展より⑥

8月29日高岡を発った芭蕉は,
倶利伽羅(くりから)峠を越えて午後2時ごろ金沢へ入りました。
ここ金沢では弟子の一人,小杉一笑(こすぎいっしょう)に会うことを大変楽しみにしており,着いたら先ず一番に一笑を訪ねようとしていました。

しかし,残念ながら一笑は前年に36歳の若さで亡くなっており,
金沢に到着して一笑の死を知った芭蕉は大変に悲しみました。
そして,9月5日に催された一笑の追善会でこの句を詠んだそうです。

「塚も動け 我泣声(わがなくこえ)は 秋の風」

墓前で私が泣く声は,秋風となって君が眠る塚を動かして,
君の魂まで届いているだろうか…