市来の七夕踊「つくいもん」

【開催地】いちき串木野市大里地区
【開催日】平成23年8月7日
【指 定】国指定無形民俗文化財「市来の七夕踊」

8月7日(日)いちき串木野市大里地区で「市来の七夕踊」が開催されました。
これは、島津義弘公の朝鮮の役での活躍を記念して踊られた事と、
大里地区の開田の祝いが始まりで、今年で326回目になるそうです。
鶴ヶ丘八幡神社で太鼓踊りが奉納された後
3つの地区で七夕踊りが披露されます。

何と言っても市来の七夕踊りといえば、先ずこの「つくいもん」です。
つくいもん(大きな張り子の作りもの)は、鹿、虎、牛、鶴の順に現れます。
骨組みは青竹、顔の部分は紙を張り、背は布で覆い、シュロで飾り、
腹の部分には山ブドウを半分乾燥させたものを下げています。
山ブドウは香りがよい、という理由で昔から使用しているそうで
地元の方たちは良い山ブドウがどこに生えているか
日頃から目を付けているそうです。

まず現れるのは鹿。
鹿は3人の鉄砲を持ったシカトイ(鹿捕り)と現れます。

鹿らしい躍動感のある動きや
シカトイに撃たれて仕留められるまでをユーモラスに表現します。
この鹿の中には4人の青年が入っていて、一糸乱れぬ足さばきです。

この日、鹿は川まで追い込まれていました。

次に現れる虎は鹿よりも大きく、中には8人、トラトイ(虎捕り)が4人です。

かなりの迫力で子供たちは逃げ回っていました。
中の様子が分かるでしょうか。
口を開けたり、舌を動かしたり、頭を担当している人はとても忙しそうです。

そして、つくいもんの中で一番大きな牛は総勢16人で担いでいます。

前後にウシツケ(牛使い)が1人づついます。


ウシツケの掛け声に合わせてつくいもんは前後に移動します。
牛が前かがみになる動作、重たそうです。


最後は鶴です。


餌撒きが先導し、後ろには鷹狩りの武士がついています。


この日は台風9号の影響で風が強く向かい風に悪戦苦闘しているようでしたが
餌の籾殻をついばんだり、羽をばたつかせたり
細かい仕草が丁寧に表現されていました。


最初に鶴が稲穂を運んできた、という伝説に基づいて
くちばしに稲穂をくわえています。
鶴の首の色をはじめ、つくいもんに使用している赤の彩色は
全てベンガラを使用しているそうです。


さて、つくいもんの次は琉球王行列がやってきます。
それはまた、次回ご紹介しますね。

飯倉神社の御田植祭

【開催地】南九州市川辺町 飯倉神社
【開催日】平成23年7月10日

7月10日、豊玉姫神社の水からくりを見た後に
南九州市川辺町にある飯倉神社の御田植祭まで足を延ばしてみました。
飯倉神社は樹齢1200年の川辺の大クス(県の指定文化財・天然記念物)がある神社です。
先ずは神社の境内で棒踊りが奉納されました。


この棒踊りは3つの地区が毎年交代で奉納するそうです。
それぞれ踊りや歌も異なるそうで
今年は松崎自治会の6尺と3尺の棒による踊りでした。


その後、猿田彦(ここでは五穀豊穣の神として)の先導で御神田に向い、
御神田の榎の木の前で神事を行いました。


この榎、以前は子供が木登りをして遊んでいたほど大きな木だったそうですが、
10年ほど前に強風で倒れてしまい、新たに植えられたものだそうです。


早乙女による田植えが終わると
再び猿田彦の先導で神社に戻り、拝殿で田の神さぁの舞が奉納されました。


田の神さぁは左手に鍬、右手に鈴を持ち
背中にワラつとを背負い
田起こしから稲刈りまでを舞います。
拝殿という空間のせいでしょうか、とても幻想的な舞いでした。

お下がりに頂戴したお豆です。

豊玉姫神社の水からくり

【開催地】南九州市知覧町 豊玉姫神社
【演 目】「因幡の白兔」
【開催日】平成23年7月9日,10日
【指 定】国選択無形民俗文化財「薩摩の水からくり」
     鹿児島県指定有形民俗文化財「知覧の水車からくり」

7月10日 南九州市の知覧町にある豊玉姫神社の水からくりを見てきました。
これは水車を動力として人形を動かすという
全国でもここにしかない珍しいからくり人形で
「薩摩の水からくり」として国の選択無形民俗文化財になっています。

今年は卯年ということで演目は「因幡の白兔」でした。
上演時間は5分ほどですが、鰐鮫の背中を右から左へ飛び移る兔
鯛と格闘する釣り人の腕や腰の動き
神様たちの個々の様子がユニークだったり驚くほど緻密だったり
思いもよらぬところから登場人物が現れたりと
飽きずに何度も見てしまいました。

舞台下のからくりも一般公開されていて誰でも見ることができました。
コンピューターのない時代に小さな水車の動力一つで歯車やてこ、
重しを付けた糸を毎年演目ごとに組み合わせ、
人形個々の複雑な動きを演出する先人の技に感服しました。

ちなみに、現在は使用されている糸は漁網のようなものでしたが
昔はクジラの髭を使用していたそうです。

8月15日(終戦記念日)9時〜20時にも特別上演されますので、
興味のある方はぜひご覧になってみてください

唐カラ船

【開催地】南さつま市坊津町泊地区公民館九玉神社
【開催日】毎年5月5日

毎年5月5日に坊津の泊地区で行われる「唐カラ船」を見に行きました。

子供の健やかな成長を願うお祭りで
稚児たちが新聞紙の兜をかぶり、車輪と猿の子を付けた唐船を引いて
泊公民館から九玉神社まで歩きます。

子供たちが小さいのと、人数が少ないせいでしょうか、
掛け声はテープで流していました。
(掛け声は「豊漁」を方言で言っていましたが、何と言っていたか忘れてしまいました…)

小中学生のお兄ちゃんたちが引くのは、もっと大きな唐船です。

神社に着くと稚児たちはお祓いをしていただき
女の子たちはお祓いが終わるのを待って奴踊りを奉納します。

女の子は唐カラ船を引いた男の子の後ろを歩いて神社まで行きますが、
その前を三味線と太鼓の道行囃子と笹を持った女性たちが歩いています。
この笹は「魔よけ」のために持っているそうです。

奴踊りが終わると、稚児たちは境内で唐カラ船を引いて競争です。
その後、浜へ下りてもう一度奴踊りの奉納と稚児の競争が行われます。

最後は海から投げられる紅白餅を頂いて終了です。

唐カラ船は親が子に作ってあげるもので
前はどの家庭にもあったそうですが、
今ではこの船を作れる方は1人しかいらっしゃらないそうです。

南さつまは他にも十五夜火とぼし、よっかぶい、水車からくり、上之坊の十五夜など
国の重要文化財に指定されている伝統行事が沢山あります。
詳しくは坊津歴史資料センター輝津館(きしんかん)で紹介されています。

祁答院町藺牟田地区「田の神戻し」

【開催日】平成23年4月10日
【開催地】薩摩川内市祁答院町藺牟田地区

祁答院町藺牟田地区で行われた田の神講(田の神戻し)を見学してきました。
田の神講は、田の神さぁの年に1度の引越しです。
田の神さぁは五穀豊穣だけではなく子孫繁栄の神様でもあるので
(田の神さぁの後ろ姿を見るとよく分かります)
その集落の新婚家庭に宿を移していくのだそうです。


出発前に綺麗にお化粧を施してもらい
青竹で編んだ籠に乗り


季節の花で籠を飾ってもらい、準備完了です。


顔にヘグロ(すす)を塗って田の神さぁに扮した青二才(青年)たちが


講宿さん(田の神さぁの宿主さん)のお宅の庭で
鐘とホラ貝の音に合わせて舞を舞い、


そして…
観客に容赦なくヘグロを塗ります!


このヘグロを塗られると
1年間無病息災で過ごせるそうです。

その後も場所を変えて同じく舞を舞い、観客にヘグロを塗ってまわります。


集落を回る際、小豆入りのお餅(写真右)をワラつと(写真左)に入れて
田の神さぁの乗る籠にぶら下げ
竹筒には焼酎を入れて、まわる先様に差し上げるのだそうです。

最後に今年の講宿さんのお宅へ無事にお引っ越しとなります。

毎年4月10日に開催されるそうなので、興味のある方はぜひ見学に行ってみて下さいね。

ちなみに…
これは当館前の辻の堂後公民館に鎮座している当地区の田の神さぁです。