「薩摩伝統工人伝」で紹介されている工人は12名。
その中の一人、坂元栄(明治39~昭和48)は、鹿児島市上町に生まれた菓子職人です。
和菓子、洋菓子、どちらも名人として知られた職人だったそうです。
鹿児島や東京の菓子店で修行をした後独立。
戦後は松原神社名物のアルヘイ糖のタイを復活させた職人でもあります。
アルヘイ糖とは砂糖細工の菓子のことです。一般的にアルヘイ糖を作る職人は、それ専門で他の菓子は作らなかったそうですが、坂元栄はオールラウンダーで、何を作らせても名人だったそうです。
鹿児島市鴨池1丁目にある「とら屋」さんは、当時は鴨池動物園のお客さん向けの食堂でしたが、坂元栄が就職して菓子を提供するようになると、地元でも評判の菓子屋となりました。
最近では、映画「六月燈の三姉妹」(2013年)で三姉妹の実家「とら屋」として登場しています。
ちなみに、「とら屋」という名前は、お店の前が動物園のトラ舎で、お店からトラが見えたことから名付けられたそうです。
掛軸の裏打ち・切り継ぎ実演:田代和雄氏
1/21(日)は,田代表具店三代目の田代和雄氏による,掛軸の裏打ち・切り継ぎの実演が行れました。
田代和雄氏は,椋鳩十著「薩摩伝統工人伝」に表具師として登場する田代常吉氏の孫にあたり,常吉の技術を継承しています。
長く日本の床の間を飾ってきたものの1つに掛軸がありますが,表具師は,その掛軸の主役である高僧の書など「本紙」と呼ばれる部分を,装飾を兼ねて保護すると同時に,何百年後の修復にも耐えられるよう配慮する裏方の仕事であると自己紹介がありました。
実演では,本紙を補強するために,本紙の裏側に紙を貼り付ける「裏打ち」と,本紙を装飾するために,本紙の上下左右に布などを切り貼りする「切り継ぎ」が行われました。
裏打ちは,紙ごとの収縮の特性や,糊の粘度など,適切に見極め,また,今はしっかりくっついているけれども修復のときにはキレイにはがせる,という配慮をしながら作業し,また切り継ぎでは,さまざまな模様や素材の布が使われ,布の模様や素材・大きさによって,装飾の意味が異なることなど紹介されました。
曰く「技術自体はある程度時間がたてば習得できるが,配慮や意味付けは,長い時間携わることで知識が増し,さらに洗練されていく。それが職人の仕事を続ける醍醐味です。」と控えめながら満足気に語られた姿が印象的でした。
次回ギャラリートークは,1/27(土)午後2時より,龍門司焼 次郎太窯十二代陶工の川原輝夫氏です。
予約不要,入館料のみでご参加いただけます。
多くの方のご参加をお待ちしております。