この一品:阿多張りキセル


「薩摩伝統工人伝」で阿多張りキセルの職人として紹介されている中村保のキセルを紹介させていただきました。
中村保は、明治31年、奈良県の警察署長をしていた父のひとり息子として生まれました。
幼少から阿多の祖父母にあずけられ、中学を卒業後キセル職人に弟子入りしました。
子供の頃は手に負えないやんちゃ坊主だったようですが、職人の世界に入ってからは怒ったことがなく、阿多で「保つどん」というと、人の良い人の代名詞になっていたそうです。
また、字や絵もうまく、他の職人のキセルに書く字は全て保が担っていたと言われています。

阿多張りキセルは、丈夫でヤニが溜まらず手入れがしやすいので、女性も好んで使用していたようです。
天璋院篤姫付きの御年寄幾島も阿多張りキセルを愛用していたことでも有名です。

画像:朝日新聞 平成30年2月15日付 第2鹿児島面 「この一品」
掲載承諾書番号:18-0093 (本記事は朝日新聞社に無断で転載することはできません)